生命のうちにみなぎらしてくれる光明、自分の魂の呼吸たる光明のこと、それらを彼は考えていた。彼はその夢想のうちにほとんど幸福であった。コゼットは彼のそばに立って、薔薇色《ばらいろ》に染められてゆく雲をながめていた。
 突然コゼットは声をたてた、「お父様、だれか向こうに来るようです。」ジャン・ヴァルジャンは目をあげた。
 コゼットの言うとおりだった。
 昔のメーヌ市門へ通ずる大道は、人の知る通り、セーヴル街を延長して、郭内の大通りと直角に交わっている。その大道と大通りとの角《かど》、交差点《こうさてん》をなしてる所に、早朝にはいぶかしい響きがして、入り乱れた混雑の様が現われてきた。何ともわからない変なかっこうのものが、大通りから大道の方へ進んできた。
 それはしだいに大きくなって、秩序を立てて進んでるようだったが、それでも角立って動揺していた。馬車のようでもあったが、積み荷は何やらわからなかった。馬と車輪と叫び声とが聞こえて、鞭《むち》の音も響いていた。そのうちに、闇《やみ》の中にまだのまれてはいたが輪郭がしだいにはっきりしてきた。果たして一つの馬車であって、大通りから大道へ曲がって、ジャ
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