「でもお前、私よりずっとすぐれた人で身を置く屋根も持たない者がたくさんあるんだからね。」
「ではどうして私の所には、火があったり何でも入用なものがあったりしますの。」
「それはお前が女で子供だからだよ。」
「まあ、それでは男の人は寒くして不自由していなければなりませんの。」
「ある人はだよ。」
「よござんすわ、私しょっちゅうここにきていて火をたかなければならないようにしてあげますから。」
それからまたこういうことも彼女は言った。
「お父様、どうしてあなたはそんないやなパンをお食べなさるの。」
「ただ食べていたいからだよ。」
「ではあなたがお食べなさるなら、私もそれを食べますわ。」
すると、コゼットが黒パンを食べないようにと、ジャン・ヴァルジャンも白いパンを食した。
コゼットは小さい時のことはただぼんやりとしか覚えていなかった。彼女は朝と晩に、顔も知らない母のためにお祈りをした。テナルディエ夫婦のことは、夢に見た二つの恐ろしい顔のようにして心の中に残っていた。「ある日、晩に、」森の中へ水をくみに行ったことがあるのを、彼女は覚えていた。パリーからごく遠い所だったと思っていた。初めはひ
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