のあとを追い回して満足した時、彼女は息を切らしながら彼のそばにやってきて言った。「ああほんとによく駆けたこと!」すると彼は彼女の額に脣《くちびる》をつけてやった。
コゼットはその老人を敬愛していた。そしていつもその跡を追った。ジャン・ヴァルジャンがいさえすればどこでも楽しかった。ジャン・ヴァルジャンは母屋《おもや》にも表庭にもいなかったので、彼女には、花の咲き乱れた園よりも石の舗《し》いてある後ろの中庭の方が好ましく、綴紐《とじひも》のついた肱掛《ひじか》け椅子《いす》が並び帷《とばり》がかかってる大きな客間よりも藁椅子《わらいす》をそなえた小さな小屋の方が好ましかった。ジャン・ヴァルジャンは時とすると、うるさくつきまとわれる幸福にほほえみながら彼女に言うこともあった。「まあ自分の家《うち》の方へおいで。そして私を少しひとりでいさしておくれ。」
娘から父親に向けて言う時にはいかにも優雅に見えるかわいいやさしい小言《こごと》を、彼女はよく彼に言った。
「お父様、私あなたのお部屋《へや》では大変寒うございますわ。なぜここに絨毯《じゅうたん》を敷いたりストーブを据えたりなさらないの。」
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