ンをちらと見かけた肉屋が彼女に言った、「あの人はよほど変な人だね。」すると彼女は答えた、「せ、聖者ですよ。」
ジャン・ヴァルジャンも、コゼットも、またトゥーサンも、出入りは必ずバビローヌ街の門からした。表庭の鉄門から彼らを見かけでもしなければ、彼らがプリューメ街に住んでいようとは思われなかった。その鉄門は常に閉ざされていた。ジャン・ヴァルジャンは庭に少しも手を入れないでほうっておいた。人の注意をひかないためだった。
しかしこのことについては、おそらく彼の見当は誤っていたようである。
三 自然の個体と合体
その庭は、かく半世紀以上も手を入れられずに放棄されていたので、普通《なみ》ならぬ様になり一種の魅力を持つようになっていた。今から四十年ばかり前にそこを通る人々は、その新鮮な青々とした茂みの後ろに秘密が隠れていようとは夢にも知らずに、その前に立ち止まってはながめたものである。見分けのつかない唐草模様《からくさもよう》の冠頂が変なふうについていて、緑青と苔《こけ》とがいっぱい生じてる二本の柱にはめ込まれ、ゆがみ揺らめいていて海老錠《えびじょう》のかかってるその古い鉄門の
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