ことができなかったので、ついに破産の宣告を受けてしまった。かえって家の方が鋳物師を取りこわしたわけである。それ以来この家には住む人もなく、すべて生命の息吹《いぶき》を伝える人のなくなった住居に見られるとおり、しだいに荒廃に帰してしまった。まだ古い道具がついたままいつまでも売貸家になっていて、プリューメ街を通る年に十二、三人足らずの人をあてにして、字の消えかかった黄ばんだ札が庭の鉄門の所に一八一〇年以来打ち付けてあった。
王政復古の終わり頃に、それら十二、三人の人は、売貸家の札が取れてるのに気づいた。また二階の窓の戸が開かれてるのも見られた。実際、家には人がはいっていたのである。窓に「かわいい窓掛け」がついてるところを見ると、中には女がいるらしかった。
一八二九年の十月に、かなり年取ったひとりの男がやってきて、家をそのまま借りてしまったのである。もとより後ろの宿所とバビローヌ街に通ずる路地も含めてだった。彼はその抜け道の秘密な二つの戸を繕わせた。前に言ったとおり家には法院長の古い道具がたいがいそなわっていた。新しい借家人は少し手入れをさせ、所々に欠けたものを補い、中庭の舗石《しきいし
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