で、この利口な法官は、自分の土地の上に、また従って何ら他人の抗議を受けることもなく、自家の秘密通路の工事をさせることができたのである。その後彼は路地に沿った土地を少しずつ区分して、庭や畑地になして売り払った。そしてその区分を買い取った人々は、路地のどちらからもただ境の壁があるのだとのみ思って、それらの園芸地や果樹園などの間に、二つの壁にはさまれてうねりくねってる長い舗石《しきいし》の路地があろうとは、夢にも気づかなかった。空の鳥だけがその秘密を知っていた。十八世紀の頬白《ほおじろ》や雀《すずめ》などは、法院長について種々ささやきかわしたことであろう。
家はマンサール式の趣向に建てられた石造で、ワットー式の趣向になった壁や道具がついていて、内部は岩石体、外部は鬘体《かつらたい》、まわりを取り巻く三重の花樹墻《かじゅがき》、何となく内密さと容態ぶった趣とおごそかなさまとが見えていて、情事と法官との好みに適したものらしかった。
その家と路地とは、今日ではもうなくなっているが、十五年ばかり前までは残っていた。一七九三年に一度、ひとりの鋳物師がそれを買い取って取りこわそうとしたが、代金を払う
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