庭があって、街路に開いてる大きな鉄門がついていた。庭の広さは一エーカー以上もあって、表からのぞいても庭だけしか見えなかった。そして家の後ろには、狭い中庭があり、中庭の奥には、窖《あなぐら》のついた二室の低い宿所があった。必要な場合に子供と乳母《うば》とを隠すためにこしらえられたものらしかった。宿所の後ろには秘密な隠し戸がついていて、そこを出ると路地になっていた。曲がりくねって上には屋根もなく二つの高い壁にはさまれてる長い狭い舗石《しきいし》の路地で、うまく人目に隠されていて、庭や畑地の囲いの間に消えているかのようだった。しかし実際は、それらの囲いの角《かど》を伝い曲がってる所を伝って、も一つの戸に達してるのだった。それも同じく秘密の戸で、家から四、五町の所にあって、ほとんど他の街区になってるバビローヌ街の寂しい一端に開いていた。
 法院長はいつもそこからはいり込んでいった。それで、彼の動静をうかがい、彼のあとをつけ、彼が毎日ひそかにどこかへ行くのを注意する者があっても、バビローヌ街へ行くことはすなわちブローメ街へ行くことになろうなどとは、思いもつかなかったろう。うまく土地を買い込んだの
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