》や土台の煉瓦《れんが》や階段の段や床《ゆか》の石板や窓のガラスなどをすっかりつけさせ、それからひとりの若い娘とひとりの年取った女中とを連れてやってきたが、それも引っ越して来るようではなく、むしろ忍び込んででも来る者のように、音もたてないではいってきた。しかし近所の噂《うわさ》にも上らなかった、なぜなら近所には住んでる人もいなかったのである。
このひそかな借家人はジャン・ヴァルジャンであり、若い娘はコゼットだった。女中はトゥーサンという独身者だった。ジャン・ヴァルジャンは彼女を病院と貧窮とから救い出してやったのであるが、老年で田舎者《いなかもの》で吃《ども》りだという三つの条件をそなえていたので、自分で使うことにしたのだった。彼は年金所有者フォーシュルヴァンという名前でその家を借りた。おそらく読者は前に述べた事柄のうちに、テナルディエよりも先にジャン・ヴァルジャンを見て取ったであろう。
ジャン・ヴァルジャンが何ゆえにプティー・ピクプュスの修道院を去ったか? いかなることが起こったのであるか?
否何事も起こりはしなかったのである。
読者の記憶するとおり、ジャン・ヴァルジャンは修道
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