たしに約束したでしょう、何でも望み通りなものをやるって……。」
「ああ。だから言ってごらん。」
彼女はマリユスの目の中をのぞき込んで、そうして言った。
「居所がわかったのよ。」
マリユスは顔の色を変えた。身体中の血が心臓に集まってしまった。
「何の居所が?」
「あなたがあたしに頼んだ居所よ。」
そして彼女は無理に元気を出したかのようなふうでつけ加えた。
「あの……わかってるでしょう。」
「ああ。」とマリユスは口ごもった。
「あのお嬢さんのよ。」
そのお嬢さんという言葉を発して彼女は、深くため息をついた。
マリユスは腰掛けていた欄干から飛び上がって、夢中になって彼女の手を執った。
「ああそうか。僕を連れてってくれ。知らしてくれ。何でも望みなものを言ってくれ。それはどこだよ?」
「あたしといっしょにいらっしゃい。」と彼女は答えた。「町も番地もよくは知らないのよ。ここのちょうど向こう側よ。でも家はよく知ってるから、連れてってあげるわ。」
彼女は手を引っ込めた。そして次の言葉ははたで見る者の心を刺し通すだろうと思われるほどの調子で言ったが、喜びに夢中になってるマリユスには少しも感じ
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