こに住んでるか教えて下さいね。」
 マリユスは答えなかった。
「まあ、」彼女は続けて言った、「あなたのシャツには穴が一つあいているわ。あたしが縫ってあげてよ。」
 彼女はある表情をしたが、それはしだいに曇ってきた。「あなたはあたしに会ったのがいやな様子ね。」
 マリユスは黙っていた。彼女もちょっと口をつぐんだが、それから叫んだ。
「でもあたしがそのつもりになりゃあ、あなたをうれしがらせることだってできるわ。」
「なに?」とマリユスは尋ねた。「あなたは何のことを言ってるんです。」
「まあ、前にはお前って言ってたじゃないの。」と彼女は言った。
「よろしい、お前は何のことを言ってるんだい。」
 彼女は脣《くちびる》をかんだ。何か心のうちで思い惑ってることがあるらしく、躊躇《ちゅうちょ》してるようだった。しかしついに決心したように見えた。
「なに同じことだ……。あなたは悲しそうな様子をしてるわね。あたしあなたのうれしそうな様子が見たいのよ。笑うっていうことだけでいいから約束して下さいね。あなたの笑うところが見たいのよ、そして、ああありがたいっていうのを聞きたいのよ。ねえ、マリユスさん、あなたあ
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