ホならないと思ってはいたが、小銭だの法価を失った銅貨だのしか恵まなかった、そして天国の道によって地獄に行く方法を見いだしていた。兄のジルノルマン氏の方は、施与をおしまないで、好んでまた鷹揚《おうよう》に与えていた。彼は親切で、性急で、恵み深くて、もし金がたくさんあったらそのやり口はみごとなものだったろう。自分に関係することなら何でも、たとい騙詐《かたり》でも、堂々とやってもらいたがっていた。ある日、ある相続の件について、厚かましい明らかなやり方でその道の者からごまかされた時、彼は次のようにおごそかに叫んだ。「チェッ! いかにも卑しいやり方だ! かかる我利我利を私は恥ずかしく思う。この節ではすべてが、悪者までが堕落している。断じて、それは私のような者から盗むべきやり口ではない。森の中で盗まれたようなものだ、しかも悪い盗み方だ。森は[#「森は」に傍点]督政官《コンスユル》の名を汚さざらんことを[#「の名を汚さざらんことを」に傍点]。」([#ここから割り注]訳者注 森の中で盗まれることは、大胆な避くる道のない方法で盗まれることを言う[#ここで割り注終わり])彼はまた、前に言ったとおり二度妻を
前へ
次へ
全512ページ中64ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング