ヘ、八十七歳の人の設けた児である。そんなことは何も不思議とするには当たらない。聖書を見てもわかる。ただこのお児さんは、私《わし》のでないということを宣言する。がまあ世話してやるがいい。このお児さんが悪いのではない。」そのやり方はいかにも善良だった。女はマニョンという名だったが、次の年にまた第二の子供を彼に贈ってきた。それもやはり男の児だった。そしてこんどはジルノルマン氏もついに降参した。彼はふたりの子供を母親に送り返して、該母親が再びかかることをしないという条件で、その養育料として毎月八十フランを与えることにした。彼はつけ加えて言った。「もちろん母親はふたりを大事にしなければいけない。時々私が見に行くことにする。」そして彼は実際それを行なった。彼はまた牧師になっているひとりの弟を持っていた。その弟はポアティエ学会の会長を三十三年間もしていて、七十九歳で死んだ。「若くて[#「若くて」に傍点]亡《な》くなった[#「くなった」に傍点]」とジルノルマン氏は言っていた。彼はその思い出をあまり多く持っていなかった。弟はおとなしい吝嗇家《りんしょくか》で、牧師だから貧しい人々に出会えば施与をしなけれ
前へ 次へ
全512ページ中63ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング