たに。」
少年は既に向こうに行っていた。
「しッしッ。」と彼は言った。「やはり犬には違いないや。」
婆さんは息もつまらんばかりに腹を立てて、すっかり立ち上がった。目尻の皺《しわ》と口角とがいっしょになってる角張った皺だらけの蒼白《そうはく》な顔を、街灯の赤い光が正面から照らした。身体は影の中に隠れて、頭だけしか見えなかった。暗夜のうちから一条の光で切り取られた「老耄《おいぼれ》」そのものの面かと思われた。少年はそれをじろじろながめた。
「お上《かみ》さんも美しいがね、俺の気に入るたちのものじゃあないや。」と彼は言った。
彼はまた歩き出して、歌い初めた。
[#ここから4字下げ]
クードサボ王様(どた靴王様《ぐつおうさま》)
狩りに行かれぬ、
烏の狩りに……
[#ここで字下げ終わり]
そう三句歌った後、彼は口をつぐんだ。彼は五十・五十二番地の家の前にきていた。そして戸がしまってるのを見て、足で蹴《け》り初めた。その大きな激しい音は、彼の少年の足よりもむしろ、その足にはいてる大人《おとな》の靴を示していた。
そのうちに、プティー・バンキエ街の角《かど》で出会った先刻の婆さんが、
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