。
繩梯子《なわはしご》はまだ動いていた。
「畜生!」とジャヴェルは口の中で言った。「あれが一番大事な奴《やつ》だったに違いないが。」
二十二 第二部第三編に泣きいし子供
それらの事件がオピタル大通りの家で起こったその次の日、オーステルリッツ橋の方からきたらしいひとりの少年が、フォンテーヌブロー市門の方へ向かって右手の横丁を進んで行った。まったく夜になっていた。少年は色青くやせていて、ぼろをまとい、二月の寒空に麻のズボンをつけ、声の限りに歌を歌っていた。
プティー・バンキエ街の角《かど》の所に、腰の曲がった婆さんが、街灯の光を頼りに掃《は》き溜《だ》めの中をかき回していた。少年は通りすがりにその婆さんにつき当たって、それからあとじさりながら大きい声で言った。
「おやあ! 俺《おれ》はまたでかいでかい犬かと思ったい。」
彼はその二度目の「でかい」という言葉を、おどけた声を張り上げて言った、文字にすればその言葉だけ一段と活字を大きくすべき所である。
婆さんは怒って立ち上がった。
「小僧め!」と彼女はつぶやいた。「かがんでいなかったら、蹴飛《けと》ばしてやるところだっ
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