は警官らがはいってきてからは、一言をも発せず、じっと頭をたれていた。
「その者を解いてやれ。」とジャヴェルは言った。「そしてひとりも外へ出てはならんぞ。」
そう言って彼は、おごそかにテーブルの前にすわった。テーブルの上には蝋燭《ろうそく》とペンやインキがまだ置いてあった。彼はポケットから印のはいった紙を一枚取り出して、調書を書き初めた。
いつも同一なきまり文句を二、三行書いた時、彼は目を上げた。
「その男どもから縛られていた者をここに連れてこい。」
警官らはあたりを見回した。
「どうしたんだ、」とジャヴェルは尋ねた、「その者はどこにおるんだ。」
悪漢どもの捕虜、ルブラン氏もしくはユルバン・ファーブル氏、もしくは、ユルスュールあるいはアルーエットの父親は、消えうせてしまっていた。
扉《とびら》には番がついていたが、窓には番がいなかった。彼は縛りが解かれたのを見るや否や、ジャヴェルが調書を書いてる間に、混雑と騒ぎと人込みと薄暗さとまただれも自分に注意を向けていない瞬間とに乗じて、窓から飛び出して行ったのである。
ひとりの警官は窓の所へ駆け寄って見回した。外にはだれも見えなかった
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