彼の耳にささやいた。
「あれはジャヴェルだ。俺《おれ》はあいつに引き金を引くなあいやだ。貴様やってみるか。」
「やるとも。」とテナルディエは答えた。
「じゃあ打ってみろ。」
テナルディエはピストルを取って、ジャヴェルをねらった。
三歩前の所にいたジャヴェルは、彼をじっとながめて、ただこれだけ言った。
「打つな、おい、当たりゃしない。」
テナルディエは引き金を引いた。弾《たま》ははずれた。
「それみろ!」とジャヴェルは言った。
ビグルナイユは玄翁《げんのう》をジャヴェルの足下に投げ出した。
「旦那《だんな》は悪魔の王様だ、降参すらあ。」
「そして貴様たちもか。」とジャヴェルは他の悪漢どもに尋ねた。
彼らは答えた。
「へえ。」
ジャヴェルは静かに言った。
「そうだ、それでよし。俺が言ったとおり、皆おとなしい奴《やつ》らだ。」
「ただ一つお願いがあります、」とビグルナイユは言った、「監禁中|煙草《たばこ》は許していただきてえんですが。」
「許してやる。」とジャヴェルは言った。
そして後ろをふり返って呼んだ。
「さあはいってこい。」
剣を手にした巡査と棍棒《こんぼう》の類を持っ
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