スいた。彼の目にはその老嬢も七、八歳の子供としか見えなかった。彼はまた激しく召し使いどもに平手を食わした、そして「このひきずり奴《め》が!」とよく言った。彼が口癖のののしり語の一つは、足が額にくっつこうとも[#「足が額にくっつこうとも」に傍点]というのだった。ある点について彼は妙に泰然としていた。毎日ある理髪屋に顔をそらせていた。その理髪屋はかつて気が狂ったことのある男で、愛嬌者《あいきょうもの》のきれいな上《かみ》さんである自分の女房のことについてジルノルマン氏を妬《や》いていたので、従って彼をきらっていた。ジルノルマン氏は何事にも自分の鑑識に自ら感心していて、自分は至って機敏だと公言していた。次に彼の言い草を一つ紹介しよう。「実際|私《わし》は洞察力《どうさつりょく》を持ってるんだ。蚤《のみ》がちくりとやる場合には、どの女からその蚤がうつってきたか、りっぱに言いあてることができる。」彼が最もしばしば口にする言葉は、多感な男[#「多感な男」に傍点]というのと自然[#「自然」に傍点]というのだった。この第二の方の言葉は、現代使われてるような広大な意味でではなかった。そして彼は炉辺のちょ
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