チとした風刺のうちに独特な仕方でそれを※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]入《そうにゅう》していた。彼は言った。「自然は、あらゆるものを多少文明に持たせるため、おもしろい野蛮の雛形《ひながた》までも文明に与えている。ヨーロッパはアジアやアフリカの小形の見本を持っている。猫《ねこ》は客間の虎《とら》であり、蜥蜴《とかげ》はポケットの鰐《わに》である。オペラ座の踊り子たちは薔薇《ばら》のような野蛮女である。彼女らは男を食いはしないが、男の脛《すね》をかじっている。というよりも、魔術使いだ。男を牡蠣《かき》みたいにばかにして、貪《むさぼ》り食う。カリブ人は人を食ってその骨だけしか残さない、だが彼女らはその殻だけしか残さない。そういうのがわれわれの風俗だ。われわれの方はのみ下しはしないが、かみつくのだ。屠《ほふ》りはしないが、引っかくのだ。」

     二 この主人にしてこの住居あり

 彼はマレーのフィーユ・デュ・カルヴェール街六番地に住んでいた。自分の家であった。この家はその後こわされて建て直され、パリーの各街路の番地変更の時にやはりその番地も変えられ
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