した。
「うちのお上《かみ》だ。」とテナルディエは言った。
 その言葉の終わるか終わらないうちに、果たしてテナルディエの女房が室《へや》に飛び込んできた。まっかになって、息を切らし、あえいで、目を光らしていた。そしてその大きな両手で一度に両腿《りょうもも》をたたきながら叫んだ。
「嘘《うそ》の住所だ。」
 女房が引き連れていた悪漢が、彼女のあとからはいってきて、またその斧《おの》を取り上げた。
「嘘の住所だと!」テナルディエは鸚鵡返《おうむがえ》しに言った。
 女房は言った。
「だれもいやしない。サン・ドミニク街十七番地にユルバン・ファーブルなんて者はいやしない。だれにきいても知ってる者なんかいないよ。」
 彼女は息をつまらして言葉を切ったが、それからまた続けて言った。
「テナルディエ、お前さんはその爺《じい》さんにばかにされたんだよ。あまりお前さんも人がよすぎるじゃないか。私ならほんとにそいつの頤を四つ裂きにでもしておいてかかるんだがね。意地の悪いことをしやがったら、生きてるまま煮たててやるんだがね。そうすりゃあ、きっと本当のことを言って娘のおる所や金を隠してる所を吐き出してしまった
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