がした。どうしたものであろう。ピストルを打つがいいか。その悪漢どもを皆警官の手に渡してしまうがいいか。しかしそれにしても、あの恐ろしい斧《おの》の男は若い娘を連れてやはり手の届かぬ所に行ってるだろう。マリユスは恐ろしい意味が察せらるるテナルディエの数語を思った。「もしお前さんがわしを捕縛させるようなことをすれば[#「もしお前さんがわしを捕縛させるようなことをすれば」に傍点]、わしの仲間がアルーエットに手を下すばかりだ[#「わしの仲間がアルーエットに手を下すばかりだ」に傍点]。」
 今はもう大佐の遺言のためばかりではなく、また自分の恋のために、愛する人の危険のために、差し控えていなければならないように彼は思った。
 既に一時間以上も前から続いたその恐ろしい情況は一瞬ごとに様子を変えていった。マリユスは勇を鼓して最も悲痛な推測を一々考慮してみた、そして何かの希望をさがし求めたが少しも見い出されなかった。彼の脳裏の騒乱はその巣窟《そうくつ》の気味悪い沈黙と異様な対照をなしていた。
 その沈黙のうちに、階段の所の扉《とびら》が開いてまたしまる音が聞こえた。
 捕虜は縛られながらちょっと身を動か
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