んが二十万フランの小金《こがね》をわしにくれるとすぐに娘さんを返してあげる。もしお前さんがわしを捕縛させるようなことをすれば、わしの仲間がアルーエットに手を下すばかりだ。まあざっとこういう筋道だ。」
捕虜は一言をも発しなかった。ちょっと休んでからテナルディエは言い続けた。
「お聞きのとおり何でもねえことなんだ。お前さんの心次第で何も悪いことは起こりゃあしねえ。うち明けてわしは話したんだ。よくのみ込んでおいてもらいてえと思ってな。」
彼は言葉を切った。捕虜は口を開こうともしなかった。テナルディエはまた言った。
「家内が帰ってきて、アルーエットは出かけたと言いさえすりゃあ、すぐにお前さんは許してあげる。勝手に家に帰って寝てもいい。ねえ、わしらは別に悪い計画《たくらみ》を持ってやしねえ。」
恐るべき幻がマリユスの脳裏を過《よ》ぎった。何事ぞ、彼らはその若い娘を奪ってここへは連れてこないのか。あの怪物のひとりがその娘を暗黒のうちに運び去ろうとするのか。いったいどこへ?……そしてもしその娘が果たして彼女であったならば! いや彼女であることは明らかである。マリユスは心臓の鼓動も止まるような気
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