に違いない。私だったらそういうふうにやってのけるよ。男なんて女よりはよほどばかだって言うが、まったくだ。十七番地なんかにはだれもいやしない。大きな門があるきりなんだ。サン・ドミニク街にはファーブルなんて者はいやしない。大急ぎで馬をかけさせるし、御者には祝儀をやるし、いろいろなことをしてさ。門番の男にも聞いたし、しっかり者らしいそのお上さんにも聞いたが、そんな人はてんで知らないじゃないかね。」
 マリユスはほっと息をついた。ユルスュールかあるいはアルーエットか本当の名前はわからないが、とにかく彼女は救われたのだった。
 たけり立った女房が怒鳴りちらしてる間に、テナルディエはテーブルの上に腰掛けた。彼は一言も発しないでそのままの姿勢をして、たれてる右足を振り動かしながら、残忍な夢想に沈んでるような様子で、しばらく火鉢《ひばち》の方を見やっていた。
 ついに彼は、特に獰猛《どうもう》なゆっくりした調子で捕虜に言った。
「嘘《うそ》の住所だと、いったい貴様何のつもりだ。」
「時間を延ばすためだ!」と捕虜は爆発したような声で叫んだ。
 そして同時に彼は縛られた繩《なわ》を揺すった。それは皆切れて
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