が出てゆくと、テナルディエは半ば開いている扉《とびら》から顔をさし出して、廊下で叫んだ。
「何より手紙を落とさないようにしろ! 二十万フラン持ってると同じだぞ。」
テナルディエの女房のしわがれた声がそれに答えた。
「安心しておいで。内ふところにしまってるから。」
一分間とたたないうちに、鞭《むち》の音が聞こえたが、それもすぐに弱くなって消えてしまった。
「よし、」とテナルディエはつぶやいた、「ずいぶん早えや。あの調子で駆けてゆきゃあ、家内は四、五十分で戻ってくる。」
彼は暖炉に近く椅子《いす》を寄せ、そこに腰をおろして、両腕を組み、泥だらけの靴《くつ》を火鉢《ひばち》の方へ差し出した。
「足が冷てえ。」と彼は言った。
テナルディエと捕虜とともにその部屋《へや》の中にいるのは、もう五人の悪漢ばかりだった。彼らは仮面をつけたりあるいは黒く塗りつぶしたりして顔を隠しながら、なるべく恐ろしく見せかけるように、炭焼き人だの黒人だの悪魔だのの姿をまねていたが、皆のろい沈鬱《ちんうつ》な様子をしていた。それを見ると、彼らは罪悪を犯すことをもちょうど仕事をするような具合に、至って平気で、何ら憤
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