、その身振り、一語ごとに炎をほとばしらすその目つき、またすべてを暴露する悪心の爆発、虚勢と卑劣と、傲慢《ごうまん》と丁重と、憤激と愚昧《ぐまい》とその混合、真実の苦情と虚偽の感情とのその混淆《こんこう》、暴戻《ぼうれい》の快感をむさぼる悪人らしいその破廉恥、醜い魂のその厚顔なる赤裸、あらゆる苦しみと憎しみとが結びついてるその火炎、すべてそれらのもののうちには、害悪のごとく嫌悪《けんお》すべきまた真理のごとく痛切なる何物かが存していた。
 大家の画面、テナルディエがルブラン氏に買ってくれと言い出したダヴィドの絵は、もう読者もほぼ察し得たであろうが、実は彼の宿屋の看板にほかならなかった。それは読者の記憶するとおり、彼が自分で描いたものであって、モンフェルメイュにおける失敗以来なお取って置いた唯一のものだった。
 ちょうどテナルディエの位置がマリユスの視線を妨げないようになったので、マリユスは今その絵らしいものをながめることができた。なるほどその塗りたくってある中に、戦争らしいありさまと、背景の煙と、ひとりの男をかついでる人間とが認められた。それがすなわちテナルディエとポンメルシーとのふたり
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