てわけさ。この絵はな、ブラッセルでダヴィドが描いたものなんだ。何が描いてあるかわかるか。この俺を描いたんだ。ダヴィドは俺の手柄を後の世まで残そうと思ったんだ。その将軍を背にかついで、弾丸《たま》の下をくぐって運んでゆくところだ。物語はざっとこのとおりさ。俺は何もその将軍に世話になっていたわけじゃねえ。他人も同様さ。それでも俺は生命を捨ててその人を助けた。その証明書はポケットに一杯あらあ。俺はワーテルローの名高い兵士だぞ。ところで、親切にそれだけ言ってきかしてやったからには、これでおしまいにしよう。つまり俺は金がほしいんだ。たくさんな金が、莫大《ばくだい》な金がほしいんだ。うんと言わなきゃあ、やっつけてしまうばかりだ、いいか。」
 マリユスは心の苦悩を多少おさえ得て、耳を傾けていた。そして最後の疑念もすべて消えてしまった。その男こそまったく、父の遺言にあるテナルディエだったのである。そしてテナルディエが父の忘恩を非難するのを聞き、自分は今や必然にその非難を至当のものたらしめんとしていることを思って、マリユスは身を震わした。彼の困惑はますます深くなった。その上、テナルディエの言葉、その語調
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