で、救った軍曹と救われた大佐とである。マリユスは酒に酔ったがようだった。その画面は父がまだ生きてるような感を彼にいだかせた。もはやそれはモンフェルメイュの宿屋の看板ではなかった。一つの復活であり、墳墓はその口を開いて、幻影がそこに立ち現われた。マリユスは両の顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》に心臓の鼓動を聞いた。耳にはワーテルローの大砲の響きが聞こえ、気味悪いその板の上にぼんやり描かれてる血に染まった父の姿は、彼を脅かした。そして彼には、その怪しい幽霊が自分をじっと見つめてるように思われた。
テナルディエは一息ついて、ルブラン氏の上に血走った瞳《ひとみ》をすえ、低いぶっきらぼうな声で言った。
「今貴様を踊らしてやる、だがその前に何か言うことがあるか。」
ルブラン氏は黙っていた。その沈黙のうちに、しわがれ声の忌まわしい嘲《あざけ》りが廊下から響いた。
「薪《まき》でも割るなら俺《おれ》が行くぞ。」
それはおもしろがってる斧《おの》を持った男だった。
同時に、毛だらけの泥まみれの大きな顔が、歯というよりも牙《きば》を出してすごい笑いを浮かべながら、扉《とびら》の
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