しゅじゅ》の喜びであり、もはや身を守り得ないほど死に瀕《ひん》してはいるがまだ苦痛を感ずるくらいの命はある病める牡牛《おうし》を、初めて引き裂きかけた豪狗《ごうく》の喜びである。
ルブラン氏は彼の言葉を少しもさえぎらなかった。しかし彼が言いやめた時にこう言った。
「私には君の言うことがわからない。君は何か思い違いをしているようだ。私はごく貧しい者で、分限者なんかではない。私は君を知らない。だれかと人違いをしたのでしょう。」
「なんだと、白ばっくれるな。」とテナルディエはうめき出した。「冗談を言うない。ぐずぐずぬかしやがって、老耄《おいぼれ》めが。貴様、覚えていねえのか。俺がわからねえのか。」
「失礼だがわからない。」とルブラン氏は丁寧な調子で答えたが、それはかかる場合に何だか力強く妙に聞こえた。「君はどうも悪党らしいが。」
人の知るとおり、嫌悪《けんお》すべき輩《やから》はすべていら立ちやすいものであり、怪物はすべて怒りやすいものである。悪党という言葉を聞いて、テナルディエの女房は寝台から飛びおり、テナルディエは握りつぶさんばかりに椅子《いす》をつかんだ。「じっとしてろ。てめえは!
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