マリユスは女房の重々しい手が暗がりに扉の鍵《かぎ》を探ってる音を聞いた。扉は開いた。彼はその場所に、恐れと驚きとのために釘付《くぎづ》けにされたように立ちすくんだ。
 ジョンドレットの女房ははいってきた。
 軒窓から一条の月の光がさして、室《へや》の中のやみを二つに分けていた。その一方のやみは、マリユスがよりかかってる壁の方をすっかりおおっていたので、彼の姿はその中に隠されていた。
 女房は目を上げたが、マリユスの姿に気づかなかった。そしてマリユスが持っていた二つきりの椅子を二つとも取って、室を出てゆき、後ろにがたりと扉をしめていった。
 彼女は部屋に戻った。
「さあ椅子《いす》を二つ持ってきたよ。」
「そこで、向こうに龕灯《がんどう》がある。」と亭主は言った。「早くおりて行け。」
 女房は急いでその言葉に従い、ジョンドレットただひとり室《へや》の中に残った。
 彼はテーブルの両方に二つの椅子を置き、炭火の中に鑿《のみ》を置きかえ、暖炉の前に古屏風《ふるびょうぶ》を立てて火鉢《ひばち》を隠し、それから繩《なわ》の積んである片すみに行き、そこに何か調べるようなふうに身をかがめた。その
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