をさえぎった。
「それはとにかく、どうなさるつもりです。」
警視はただこう答えた。
「あの家に室《へや》を借りてる者は皆、夜分に帰ってゆくための合い鍵《かぎ》を持っている。君も一つ持ってるはずだね。」
「ええ。」とマリユスは言った。
「今そこに持ってるかね。」
「ええ。」
「それを私《わし》にくれ。」と警視は言った。
マリユスはチョッキの隠しから鍵を取って、それを警視に渡し、そして言い添えた。
「ちょっと申しておきますが、人数を引き連れてこられなければいけません。」
警視はマリユスに一瞥《いちべつ》を与えた。ヴォルテールがもし田舎出《いなかで》のアカデミー会員から音韻の注意でも受けたら、やはりそんな一瞥《いちべつ》を与えたことだろう。そして警視は、太い両手をマントの大きな両のポケットにずぶりとつっ込み、普通は拳骨《げんこつ》と言わるる鋼鉄の小さなピストルを二つ取り出した。彼はそれをマリユスに差し出しながら、口早に強く言った。
「これを持って、家に帰って、室《へや》に隠れていたまえ。不在らしく見せかけなくちゃいかん。二つとも弾《たま》がこもってる。一梃《いっちょう》に二発ずつだ。よ
前へ
次へ
全512ページ中418ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング