した。
 彼は窓の所へ行った。雪はなお降り続いていて灰色の空を隠していた。
「何てひどい天気だ!」と彼は言った。
 それから外套《がいとう》の襟《えり》を合わした。
「こいつあ少し大きすぎる。」そしてつけ加えた。「だがまあいいや。あいつが置いてゆきやがったんで大きに助からあ。これがなかったら外へも出られねえし、何もかも手違いになる所だった。世の中の事ってどうかこうかうまくゆくもんだ。」
 そして帽子を眼深《まぶか》に引き下げながら、彼は出て行った。
 戸口から彼が五、六歩したかどうかと思われるくらいの時、扉《とびら》は再び開いて、その間から彼の荒々しいそしてずるそうな顔が現われた。
「忘れていた。」と彼は言った。「火鉢《ひばち》に炭をおこしておくんだぜ。」
 そして彼は女房の前掛けの中に、「慈善家」がくれた五フラン貨幣を投げ込んだ。
「火鉢に炭を?」女房は尋ねた。
「そうだ。」
「幾桝《いくます》ばかり?」
「二桝もありゃあいい。」
「それだけなら三十スーばかりですむ。残りでごちそうでも買おうよ。」
「そんなことをしちゃいけねえ。」
「なぜさ?」
「大事な五フランをむだにしちゃいけねえ
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