。世間にはどうしたわけのものか少しも老《ふ》けねえ奴《やつ》がいる。それから声までそっくりだ。ただいい服装《なり》をしてるだけのことだ。全く不思議な畜生だが、とうとうとらえてやったというもんだ。」
彼は立ち止まって、娘らの方へ言った。
「お前たちは出て行くんだ。――ばかだな、あれに気がつかなかったって。」
娘らは父の言うとおりに出てゆこうとして立ち上がった。
母親はつぶやいた。
「手にけがをしてるのに……。」
「外の風に当たればなおる。」とジョンドレットは言った。「出て行け。」
明らかに彼にはだれも口答えができないらしい。ふたりの娘は出て行った。
ふたりが扉《とびら》から出ようとした時、亭主は姉娘の腕をとらえ、一種特別な調子で言った。
「お前たちはちょうど五時にここへ帰って来るんだぞ、ふたりいっしょに。用があるんだから。」
マリユスは更に注意して耳を澄ました。
女房とふたりきりになると、ジョンドレットはまた歩き出し、黙って室《へや》の中を二、三度回った。それからしばらくの間、着ていた女シャツの裾《すそ》をズボンの帯の中に押し込んでいた。
突然彼は女房の方を向き、腕を組み
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