になりたいと言うのね。」
 あの人たち[#「あの人たち」に傍点]というのがあの娘さん[#「あの娘さん」に傍点]と変わったことのうちには、何かしら意味ありげなまた苦々《にがにが》しいものがあった。
「とにかくお前にできるかね。」とマリユスは言った。
「あの美しいお嬢さんの居所を聞き出してくることね?」
 あの美しいお嬢さん[#「あの美しいお嬢さん」に傍点]というその言葉のうちには、なお一種の影があって、それがマリユスをいらいらさした。彼は言った。
「まあ何でもいいから、あの親と娘との住所だ。なにふたりの住所だけだよ。」
 娘はじっと彼を見つめた。
「それであたしに何をくれるの。」
「何でも望みどおりのものを。」
「あたしの望みどおりのものを?」
「ああ。」
「ではきっとさがし出してくるわ。」
 彼女は頭を下げ、そして突然ぐいと扉《とびら》を引いた。扉はしまった。
 マリユスはひとりになった。
 彼は椅子《いす》の上に身を落とし、頭と両腕とを寝台の上に投げ出し、とらえ所のない考えのうちに沈み、あたかも眩暈《げんうん》でもしてるかのようだった。朝以来起こってきたあらゆること、天使《エンゼル》
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