[#ここから割り注]訳者注 ある中庭[#ここで割り注終わり])での噂《うわさ》の種となった。その監獄に行くと、一八四三年に三十人の囚徒が白昼未曾有の脱獄をはかった時に使った排尿道が路地の下を通ってる所、ちょうど便所の舗石《しきいし》の上の方の囲壁の上に、パンショー[#「パンショー」に傍点]という彼の名前を読むことができた。それは彼が脱獄を企てたある時に、自ら大胆にもそこに彫りつけたものである。一八三二年にも、警察は既に彼に目をつけていたが、その頃彼はまだ本当に舞台に立ってはいなかったのである。
十一 惨《みじ》めなる者悲しめる者に力を貸す
マリユスはゆるい足取りで家の階段を上って行った。そして自分の室《へや》にはいろうとする時、自分のあとについてくるジョンドレットの姉娘の姿を廊下に認めた。彼女は彼にとっては見るも不快の種だった。彼の五フランを持ってるのは彼女だった。今更それを返せと言ったところで仕方がない。官営馬車はもうそこにいず、またあの辻馬車《つじばしゃ》は遠くに行っていた。その上彼女は金を返しもすまい。また先刻きたあの人たちの住所を彼女に尋ねても、たぶんむだだろう
前へ
次へ
全512ページ中394ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング