脱し、孤独や憂愁やひとり身から脱していたであろう。自分の運命の黒い糸をあの黄金色《こがねいろ》の美しい糸に結び合わせることができたであろう。しかるにその美しい糸口は、彼の目の前にちょっと浮かび出たばかりで、また再び断ち切れてしまったのである。彼は絶望して家に帰った。
 ルブラン氏は晩に再びやって来ると約束した、そしてその時こそはうまく跡をつけてやろう、そう彼は考え得たはずである。しかし先刻夢中になってのぞいている時、彼はその約束の言葉をもほとんど聞き取り得なかったのである。
 家の階段を上ってゆこうとした時彼は、大通りの向こう側、バリエール・デ・ゴブラン街の寂しい壁の所に、「慈善家」の外套《がいとう》にくるまったジョンドレットの姿を認めた。ジョンドレットは他のひとりの男に口をきいていた。その男は場末の浮浪人[#「場末の浮浪人」に傍点]とも言い得るような人相の悪い奴《やつ》らのひとりだった。そういう奴らは、曖昧《あいまい》な顔つきをし、怪しい独語を発し、悪いことをたくらんでいそうな風付きであって、普通は昼間眠っているもので、それから推すと夜分に仕事をしてるものらしい。
 ふたりは立ちなが
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