な人や臭い人がいっぱいいるんだもの。」
それから彼女はつくづくとマリユスをながめ、妙な様子をして言った。
「マリユスさん、あなたは自分が大変いい男なのを知ってるの?」
そして同時に同じ考えがふたりに起こった。それで娘は微笑したが、マリユスは顔を赤くした。
彼女は彼に近寄って、片手をその肩の上に置いた。
「あなたはあたしを気にも留めてないが、あたしはマリユスさん、あなたを知っててよ。ここでもよく階段の所で会ったわ。それから、オーステルリッツ橋の近くに住んでるマブーフという爺《じい》さんの家へあなたが行くのを、何度も見たわ、あの近所を歩いてる時に。あなた、そう髪の毛を散らしてる所がよく似合ってよ。」
彼女はやさしい声をしようとしていたが、そのためにただ声が低くなるばかりだった。あたかも鍵《キー》のなくなってる鍵盤《けんばん》の上では音が出ないように、彼女の言葉の一部は喉頭《こうとう》から脣《くちびる》へ来る途中で消えてしまった。
マリユスは静かに身を引いていた。
「お嬢さん、」と彼は冷ややかな厳格さで言った、「たぶんあなたのらしい包みがそこにあります。あなたにお返ししましょう。」
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