平気に現われてきて、文士ジャンフローもスペインの大尉も何ら異なるところがなかった。
この小秘密を解かんとつとめることは、まったくむだな骨折りだった。もしそれが拾い物でなかったら、単に人をからかうものとしか思われなかったろう。その上マリユスは悲しみのうちに沈んでいたので、偶然の悪戯《いたずら》を取り上げるだけの余裕もなく、街路の舗石《しきいし》が彼に試みたようなその遊びに心を向けるだけの余裕もなかった。あたかも四通の手紙の間の目隠し鬼になってからかわれてるような気がした。
またその手紙はマリユスが大通りで出会った二人の娘のものだということを示すものも、何もなかった。要するに何らの価値もない反故《ほぐ》にすぎないことは明らかだった。
マリユスは四つの手紙をまた包み紙に入れて、室《へや》の片すみになげすて、そして床についた。
翌朝七時ごろ、彼は起き上がって朝食をし、それから仕事にかかろうとした。その時静かに扉《とびら》をたたく者があった。
いったい彼は所持品と言っては何もなかったので、かつて、扉に錠をおろさなかった。ただ時として急ぎの仕事をしてる時は錠をおろすこともあったが、それも
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