室《へや》に帰りついて、マリユスは自分の服装をながめ、初めて自分のきたなさと不作法と「平素《ふだん》の」服装でリュクサンブールに散歩に行く非常な愚かさとを気づいた。その平素の服装というのは、リボンの所まで押しつぶされた帽子と、馬方のような粗末な靴《くつ》と、膝《ひざ》の所が白けてる黒いズボンと、肱《ひじ》の所がはげかかってる黒い上衣とであった。
四 大病のはじまり
翌日例の時刻に、マリユスは戸棚から新しい上衣とズボンと帽子と靴を取り出した。そしてその完全な武具に身を固め、手袋をはめ、きわめてめかし込んで、リュクサンブールに出かけた。
途中彼はクールフェーラックに出会ったが、そ知らぬ風をして通りすぎた。クールフェーラックは帰ってから友人らに言った。「今僕はマリユスの新しい帽子と上衣に出会ったよ。奴《やっこ》さんは中にくるまっていた。きっと試験でも受けに行くんだろう。ひどくぼんやりしていた。」
リュクサンブールに着くと、マリユスは池を一周し、白鳥をながめ、それからまた、苔《こけ》のために頭が黒くなり臀《しり》が片一方なくなってるある像の前に長くたたずんで、それをながめた
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