、書物の中で見当たる誤植のようなものさ。マリユスというのをテオデュールと読めばよい。」
孫に当たる甥《おい》は直接の孫と大差はない。弁護士がいないので槍騎兵《そうきへい》を入れるわけである。
ある日の朝、ジルノルマン氏がコティディエンヌ紙か何かを読んでいた時、娘ははいってきて、一番やさしい声で彼に言った。自分が目をかけてやってる者に関することだったから。
「お父さん、今朝《けさ》テオデュールがごあいさつに参ることになっています。」
「だれだ、テオデュールとは?」
「あなたの甥の子ですよ。」
「あー。」と祖父は言った。
それから彼はまた読み初めて、テオデュールとか何とかいうその甥《おい》のことはもう頭にしていなかった。そして物を読む時にはほとんどいつものことだったが、その時もやがて興奮し出した。彼が手にしていた「新聞か何か」は、もとより王党のものだったことはわかりきっているが、それが少しも筆を和らげないで、当時のパリーに毎日のように起こっていたある小事件の一つが、翌日起こることを報じていた。――法律学校と医学校との学生が、正午にパンテオンの広場に集まることになっている、評議するため
前へ
次へ
全512ページ中261ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング