《へや》に人が住んでるかさえもよく知らなかった。
「どうして追い払われるんです。」と彼は言った。
「室代を払わないからですよ。二期分もたまっています。」
「いかほどになるんです。」
「二十フランですよ。」と婆さんは言った。
 マリユスは引き出しの中に三十フランたくわえていた。
「さあ、」と彼は婆さんに言った、「ここに二十五フランあります。そのかわいそうな人たちのために払ってやり、余った五フランはその人たちにやって下さい。だが私がしたんだと言ってはいけませんよ。」

     六 後継者

 偶然にも、中尉テオデュールの属していた連隊がパリーに駐屯《ちゅうとん》することとなった。その好機はジルノルマン伯母《おば》に第二の考案を与えた。最初彼女はテオデュールにマリユスを監視させようとしたのであったが、こんどはテオデュールにマリユスのあとを継がせようと謀《はか》った。
 とにかく、家の中に青年の面影がほしいと祖父が漠然《ばくぜん》と感じているに違いない場合なので――青年という曙《あけぼの》は廃残の老人にとっては往々快いものである――別のマリユスを見いだすのに好都合だった。伯母は考えた。「なに
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