フように彼らが望んでいた二つのことがある。彼らはいつもそれを望みながら永久にそれを得ないでいる。すなわち、政府を顛覆《てんぷく》することと、ズボンを仕立て直すこと。
完全なる浮浪少年は、パリーのすべての巡査を知悉《ちしつ》していて、そのひとりに出会えばすぐに名|指《ざ》すことができる。各巡査をくわしく研究している。その平常を調べ上げて、それぞれ特殊な記録をとっている。その心の中を自由に読み取っている。彼らはすらすらと滞りなく言い得る、「某は反逆人だ[#「反逆人だ」に傍点]、――某はごく意地悪だ[#「ごく意地悪だ」に傍点]、――某は偉い[#「偉い」に傍点]奴《やつ》だ[#「だ」に傍点]、――某は滑稽な奴だ[#「滑稽な奴だ」に傍点]。」(これらの、反逆人、意地悪、偉い奴、滑稽な奴、などという言葉は、彼らに言われる時は特殊な意味を有するのである)「あいつは、ポン・ヌーフ橋を自分の物とでも思ってるのか。欄干の外の縁を歩くことを世間に禁じやが[#「やが」に傍点]る。それから向こうのは、人[#「人」に傍点]の耳を引っ張る癖がある。云々《うんぬん》、云々。」
九 ゴールの古き魂
市
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