スえて言った。
「この人のような男爵と、私《わし》のような市民とは、とうてい同じ屋根の下にいることはできない。」
 そして急に身を起こし、まっさおになり、うち震い、恐ろしい様子になり、恐るべき憤怒の輝きに額を一段と大きくして、マリユスの方に腕を差し伸ばして叫んだ。
「出て行け。」
 マリユスは家を去った。
 翌日、ジルノルマン氏は娘に言った。
「あの吸血児の所へ六カ月ごとに六十ピストル([#ここから割り注]訳者注 ピストルは金貨にして十フランに当たる[#ここで割り注終わり])だけ送って、もう決してあいつのことを私の前で口にしてはいけません。」
 まだ吐き出すべき激怒がたくさん残っており、しかもそのやり場に困って、彼はそれから三カ月以上も続けて、自分の娘に他人がましい冷ややかな口をきいていた。
 マリユスの方でもまた、憤って家を飛び出した。そして彼の激昂《げっこう》を強めた一事があったことをちょっと言っておかなければならない。家庭の紛紜《ふんうん》を複雑にするそれらのこまかな不祥事が常にあるもので、たとい根本においてはそのために不正が増大するものではないとしても、損失はそのために大きくな
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