、その身振り、一語ごとに炎をほとばしらすその目つき、またすべてを暴露する悪心の爆発、虚勢と卑劣と、傲慢《ごうまん》と丁重と、憤激と愚昧《ぐまい》とその混合、真実の苦情と虚偽の感情とのその混淆《こんこう》、暴戻《ぼうれい》の快感をむさぼる悪人らしいその破廉恥、醜い魂のその厚顔なる赤裸、あらゆる苦しみと憎しみとが結びついてるその火炎、すべてそれらのもののうちには、害悪のごとく嫌悪《けんお》すべきまた真理のごとく痛切なる何物かが存していた。
大家の画面、テナルディエがルブラン氏に買ってくれと言い出したダヴィドの絵は、もう読者もほぼ察し得たであろうが、実は彼の宿屋の看板にほかならなかった。それは読者の記憶するとおり、彼が自分で描いたものであって、モンフェルメイュにおける失敗以来なお取って置いた唯一のものだった。
ちょうどテナルディエの位置がマリユスの視線を妨げないようになったので、マリユスは今その絵らしいものをながめることができた。なるほどその塗りたくってある中に、戦争らしいありさまと、背景の煙と、ひとりの男をかついでる人間とが認められた。それがすなわちテナルディエとポンメルシーとのふたりで、救った軍曹と救われた大佐とである。マリユスは酒に酔ったがようだった。その画面は父がまだ生きてるような感を彼にいだかせた。もはやそれはモンフェルメイュの宿屋の看板ではなかった。一つの復活であり、墳墓はその口を開いて、幻影がそこに立ち現われた。マリユスは両の顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》に心臓の鼓動を聞いた。耳にはワーテルローの大砲の響きが聞こえ、気味悪いその板の上にぼんやり描かれてる血に染まった父の姿は、彼を脅かした。そして彼には、その怪しい幽霊が自分をじっと見つめてるように思われた。
テナルディエは一息ついて、ルブラン氏の上に血走った瞳《ひとみ》をすえ、低いぶっきらぼうな声で言った。
「今貴様を踊らしてやる、だがその前に何か言うことがあるか。」
ルブラン氏は黙っていた。その沈黙のうちに、しわがれ声の忌まわしい嘲《あざけ》りが廊下から響いた。
「薪《まき》でも割るなら俺《おれ》が行くぞ。」
それはおもしろがってる斧《おの》を持った男だった。
同時に、毛だらけの泥まみれの大きな顔が、歯というよりも牙《きば》を出してすごい笑いを浮かべながら、扉《とびら》の
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