レ・ミゼラブル
LES MISERABLES
第三部 マリユス
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo
豊島与志雄訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)雀《すずめ》と言い、
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)石灰|竈《かまど》や
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)輪※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]《りんね》
〔〕:アクセント分解された欧文をかこむ
(例)〔|Abaisse'〕《アベッセ》 にして、
アクセント分解についての詳細は下記URLを参照してください
http://aozora.gr.jp/accent_separation.html
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第一編 パリーの微分子
一 小人間
パリーは一つの子供を持ち、森は一つの小鳥を持っている。その小鳥を雀《すずめ》と言い、その子供を浮浪少年と言う。
パリーと少年、一つは坩堝《るつぼ》であり一つは曙《あけぼの》であるこの二つの観念をこね合わし、この二つの火花をうち合わしてみると、それから一つの小さな存在がほとばしり出る。ホムンチオ[#「ホムンチオ」に傍点](小人)とプラウツスは言うであろう。
この小さな人間は、至って快活である。彼らは毎日の食事もしていない、しかも気が向けば毎晩興行物を見に行く。肌《はだ》にはシャツもつけず、足には靴《くつ》もはかず、身をおおう屋根もない。まったくそういうものを持たない空飛ぶ蠅《はえ》のようである。七歳から十三歳までで、隊を組んで生活し、街路を歩き回り、戸外に宿り、踵《かかと》の下までくる親譲りの古いズボンをはき、耳まで隠れてしまうほかの親父《おやじ》からの古帽子をかぶり、縁の黄色くなった一筋きりのズボンつりをつけ、駆け回り、待ち伏せし、獲物をさがし回り、時間を浪費し、パイプをくゆらし、暴言を吐き、酒場に入りびたり、盗人と知り合い、女とふざけ、隠語を用い、卑猥《ひわい》な歌を歌い、しかもその心のうちには何らの悪もないのである。その魂のうちにあるものは、一つの真珠たる潔白である。真珠は泥の中にあってもとけ去らぬ。人が年少である間は、神も彼が潔白ならんことを欲する。
もし広大なる都市に向かって、「
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