割り注終わり])の所へでも行くのでございますが。嬢は私を知っていましてごく贔屓《ひいき》にしてくれます。まだトゥール・デ・ダーム街に住んでるのでございましょうか。旦那も御存じですかどうか、私は嬢といっしょに田舎《いなか》で芝居を打ったことがあります。私もいっしょに大成功でございました。で只今でもセリメーヌ([#ここから割り注]訳者注 モリエールの喜劇中の人物で機才ある美人――マルス嬢をさす[#ここで割り注終わり])は、きっと私を救ってくれますでしょう。エルミールはベリゼールに物を恵んでくれますでしょう([#ここから割り注]訳者注 前者はモリエールの喜劇中の人物で正直なる婦人、後者は伝説中の人物で零落せる将軍。――マルス嬢とジョンドレット自身とを指す[#ここで割り注終わり])。ですがこの姿ではどうにもできません。その上一文の持ち合わせもありません。まったく家内が病気なのに無一文なのでございます。娘がひどいけがをしているのに無一文なのでございます。家内は時々息がつまります。年齢《とし》のせいでもございましょうが、また神経も手伝っています。どうにかいたさなくてはなりません。また娘の方も同様で。と申して、医者も薬も、どうして払いましょう、一文もありません。ですからまあわずかなお金でも跪《ひざまず》いて押しいただくような始末でございます。芸術なんていうものもこうなってはみじめなものでございます。美しいお嬢様、それから御親切な旦那様《だんなさま》、さようではございませんか。あなた方は徳と親切とを旨《むね》とされて、いつも教会堂へおいででございますが、私のかわいそうな娘もまた教会堂へお祈りに参っていますので、毎日お姿をお見かけいたしております。私は娘どもを宗教のうちに育てたいのでございます。芝居へなんぞはやりたくないと思いましたので。賤《いや》しい者の娘はえてつまずきやすいものでございます。私はつまらないことは決して聞かせません。いつも名誉だの道徳だの徳操だのを説いてきかせています。娘どもに尋ねてもみて下さいませ。まっすぐの道を歩かなければなりません。娘どもは父として私をいただいています。ちゃんとした家庭を持たぬのがはじまりで、しまいには賤しい稼《かせ》ぎに身を落とすような不幸な者どもではございません。家なしの娘からだれかまわずの夫人となるのが常であります。ですが、ファバントゥー
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