地から3字上げ]文士ジャンフロー
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追白、四十スーほどにてもよろしく候。
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娘をつかわして小生自身参上いたさざるを御許し下されたく、実は悲惨にも服装の都合上外出いたしかね候次第に御座候。
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マリユスはついに四番目の手紙を開いた。あて名はこうだった。「サン[#「サン」に傍点]・ジャック[#「ジャック」に傍点]・デュ[#「デュ」に傍点]・オー[#「オー」に傍点]・パ会堂の慈悲深き紳士殿[#「パ会堂の慈悲深き紳士殿」に傍点]。」中には次の文句がしたためてあった。
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慈愛深き紳士殿
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もし拙者の娘と御同行下され候わば、一家困窮のきわみなる状態にあることを御認め下さるべく、また身元証明書は御覧に供すべく候。
かかる手記を御覧候わば、恵み深き貴下は必ずや惻隠《そくいん》の情を起こし下さるべしと存候。真の哲学者は常に強き情緒を感ずるものに候えば。
同情の念深き紳士殿、最も残酷なる窮乏に一家の者苦しみおり候。しかして何かの救助を得んために政府よりその証明を得るなどとは、いかに悲痛なることに候ぞや。他人より救助せらるるを待ちながら、しかも飢餓に苦しみ飢餓に死するの自由さえもなきもののごとくに候。運命はある者にはあまりに冷酷に、またある人にはあまりに寛大にあまりに親切にこれ有り候。貴下の御来臨を待ち申し候。あるいはおぼし召しあらば御施与を待申候。しかして拙者の敬意を御受け下されたく願上げ候。
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[#地から5字上げ]大人閣下のきわめて卑しき従順なる僕《しもべ》
[#地から3字上げ]俳優 ファバントゥー
それら四通の手紙を読み終わったが、マリユスは前と同じく何らの手掛かりも得なかった。第一に、どの手紙にも住所がついていなかった。
次に手紙は、ドン・アルヴァレスとバリザールの家内と詩人ジャンフローと俳優ファバントゥーと、四人の違った人からのものらしかったが、不思議にも四つとも同じ筆蹟だった。
四つとも同一人からのものでないとするならば、それをいかに解釈したらいいか?
その上、ことにそう考えさせることには、四通とも同じ粗末な黄色い紙であり、同じ煙草《たばこ》のにおいがしていた。そして明らかに文体を変えてはあるが、同じような文字使いが絶えず
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