狂的な憤怒であり、稲妻のごとき剣の颶風《ぐふう》であった。たちまちにして千四百の近衛竜騎兵は八百になされてしまった。その中佐フーラーは戦死した。ネーはルフェーヴル・デヌーエットの槍騎兵と軽騎兵とを引きつれて駆けつけてきた。モン・サン・ジャンの高地は、奪取され、奪還され、また奪取された。胸甲騎兵は騎兵の方をすてて歩兵の方へ立ち直った。あるいはなおよく言えば、その恐るべき群集は互いにつかみ合って一団となっていたのである。方陣はなおささえていた。十二回の突撃がなされた。ネーはその乗馬を殺されること四回に及んだ。胸甲騎兵の半ばは高地の上にたおれた。その戦闘は二時間にわたった。
イギリス軍はそのためにはなはだしく動揺した。もし胸甲騎兵らが凹路《おうろ》の災厄《さいやく》のために最初の突撃力が弱められていなかったならば、彼らは敵の中央を撃破し勝利を決定していたろうとは万人の疑わないところである。その非凡なる騎兵は、タラヴェラおよびバダホースの戦いに臨んだことのあるクリントンをして色を失わしめた。四分の三まで打ち負かされたウェリントンすらも、さすがに賛嘆の声を発した。彼は半ば口のうちで言った、「天
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