ろう。その失念は彼の取り返しのつかぬ大過であった。
襲撃を加えていた胸甲騎兵らは、突然襲撃を被ったのを感じた。イギリス騎兵は彼らの背後に迫っていた。前には方陣があり、後ろにはソマーセットがあった。ソマーセットは千四百の近衛竜騎兵を率いていた。また彼は右にドイツの軽騎兵を指揮してるドルンベルグを有し、左にはベルギーのカラビーヌ騎兵を指揮してるトリップを有していた。胸甲騎兵は歩兵と騎兵とから前後左右より攻撃され、四方に敵対しなければならなかった。しかもそれが何であろう。彼らは旋風であった。その勇気は筆紙のつくし難いところとなった。
その上、彼らは背後にもたえず鳴り響く砲門を受けていた。それらの退くを知らぬ勇者の背後を傷つけんがためには、それまでにしなければならなかったのである。彼らの胸甲の一つは、ビスカイヤン銃弾で左の肩胛骨《けんこうこつ》あたりに穴を明けられたのが、いわゆるワーテルローの博物館という陳列品のうちに今日存している。
かくのごときフランスの勇士に対しては、かくのごときイギリス兵を要したのであった。
それはもはや混戦ではなかった。陰影であり、狂乱であり、精神と勇気との熱
前へ
次へ
全571ページ中68ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング