寒いきびしい風、彼の青春の時代を凍らしてしまったあの風は、鉄格子《てつごうし》と手錠とで禿鷹《はげたか》の幽閉されてる墓穴の中を吹き過ぎていたが、なおいっそう酷烈悲壮なる朔風《きたかぜ》は、これらの鳩《はと》のはいってるかごの中を吹いていた。
何ゆえに?
それらのことを考える時に、彼のうちにあったすべてのものは、その崇厳なる神秘の前に消散してしまった。
かかる瞑想《めいそう》のうちに、傲慢《ごうまん》の念は消えうせた。彼はあらゆる方面から自分を検覈《けんかく》してみた。彼は身の微弱なるを感じて、幾度か涙を流した。最近六カ月の間に彼の生涯《しょうがい》のうちに入りきたったすべてのものは、あの司教の聖なる命令の方へ彼を導いていった、コゼットは愛によって、修道院は謙譲によって。
時として夕方、薄暮のころ、庭に人影もなくなったおり、礼拝堂に沿ってる道のまんなかに、はいってきたあの夜にのぞき込んだ窓の前に、贖罪《しょくざい》をなしてるあの修道女が平伏し祈祷《きとう》していた覚えの場所の方へ向いて、じっとひざまずいている彼の姿が見られた。そのようにしてあの修道女の前にひざまずきながら、彼は
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