した。
 特に心を刺す一事で、あたかも親しく天のささやく告戒を聞いたかのように彼を深く夢想に沈めさした一事があった。すなわち、壁を乗り越したこと、墻壁《しょうへき》を脱したこと、生命をもとして冒険を演じたこと、困難な苦しい登攀《とはん》をやったこと、かつて他の贖罪《しょくざい》の場所から脱せんがためになしたのと同様なあらゆる努力、それを彼はこの贖罪の場所にはいらんがためになしたのであった。それは彼の運命の象徴であったのであろうか。
 この家もまた一つの牢獄であった。そして彼がのがれてきたも一つの住居と痛ましくもごく似寄っていた。それでも彼は両者同じようだとは決して思わなかった。
 彼は再び鉄門と閂《かんぬき》と鉄格子とを見た。しかもそれらはだれを守衛するためであったか? 天使たちをであった。
 かつて虎《とら》のまわりにめぐらされてるのを見た高い壁が、今は羊のまわりにめぐらされてるのを、彼は再び見た。
 それは贖罪の場所であって、懲罰の場所ではなかった。でもその場所は、より厳格であり、より陰鬱《いんうつ》であり、より無慈悲であった。童貞女らは囚人らよりもいっそうひどく身をかがめていた。
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