感じた。それから棺板の上をこするがさがさした音を感じた。棺を穴の中におろすためにまわりを繩《なわ》でゆわえてるのだと彼は察した。
 それから彼は目が廻るような気がした。
 たぶん人夫どもと墓掘り人とが棺をぐらつかして足より頭を先にしておろしたのであろう。そして程なくまた水平になって動かなくなった時、彼は初めてすっかり我に返ることができた。穴の底に達したのである。
 彼はさすがに一種の戦慄《せんりつ》を覚えた。
 冷ややかでおごそかな一つの声が上の方で起こった。自分にわからないラテン語の言葉が、その一語一語とらえらるるくらいゆっくりと響いて来るのを彼は聞いた。
「塵《ちり》のうちに眠る者ら[#「のうちに眠る者ら」に傍点]、やがて目ざむるに至らん[#「やがて目ざむるに至らん」に傍点]、ある者は永遠の生命に[#「ある者は永遠の生命に」に傍点]、またある者は汚辱に[#「またある者は汚辱に」に傍点]。常に[#「常に」に傍点]([#ここから割り注]訳者補 まことを[#ここで割り注終わり])見んがためなればなり[#「見んがためなればなり」に傍点]。」
 一つの子供の声が言った。
「深き淵より[#「深
前へ 次へ
全571ページ中533ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング